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キツネのお礼まいり

むかしある村に、お爺さんとお婆さんが住んでおった。
ある日の夕暮れ、お爺さんが出かけて行くのを、お婆さんは戸口で見送っておったそうな。すると、お爺さんは突然畑の脇で着物を脱ぎ始め、ふんどし一丁になってしもうた。そうして着物と傘をまとめて頭に乗せると畑に入って、「川が深い、川が深い。」と言いながら、がさがさと歩き回るのじゃった。
さてはキツネに化かされたなと思うたお婆さんは、お爺さんに「爺様、煙草で一服するだよ。」と声をかけたんじゃと。すると、お爺さんはピタリと止まり、お婆さんが差し出した煙草をすぱすぱ吸った。するとお爺さんの目がだんだんはっきりしてきて正気に戻ったそうじゃ。
その日の夜も更けた頃のこと。どこからともなくキツネの鳴き声が聞こえてきた。すると眠っておったお爺さんがむくりと起き上がった。お爺さんの目は昼間と同じようにグルグルで正気ではなかったそうな。そうしてお爺さんは、外で待っておったキツネに導かれて、どんどん歩いて行った。
そうして山の中まで来て、お爺さんはふと正気に戻ったそうな。みると、足元の草むらに6匹の小さな子狐が腹を減らして震えておる。これはきっと母狐が子狐の世話を頼みに来たんじゃと思うたお爺さんは、家に帰り、重箱に一杯稲荷ずしを作って子狐達に持っていってやった。
お爺さんとお婆さんは、それから三日目、七日目にも稲荷ずしを作って子狐達に持っていってやった。それでお爺さんの家の米は全部なくなってしもうたそうな。
それから何日かして、お爺さんとお婆さんは夜中ものすごい音で目を覚ました。そっと表へ出てみると、何とそこには米俵が三俵も積んであった。二人はあちこち見渡してみたが、空には煌々と月が輝いているだけで、どんな人影も見当たらなかった。
ただ、二人は遠くの山の麓を走って行く小さな七つの影に気がつかなかったそうな。キツネがお礼に来たのじゃなあ。
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