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かわうその手伝い

昔々、那珂川(なかがわ)が澄んだ豊かな水をたたえていた頃の話。 烏山(からすやま)に近い興野(きょうの)の川上の岸辺には、カワウソがたくさん住み着いていた。そしてそのカワウソの住処の近くに、仙造(せんぞう)という名の爺さまが、粗末な小屋をかけて住んでいた。
この仙造爺さん、川で魚やサワガニを取って暮らしを立てていたのだが、仙造爺さんが釣り糸を垂らすと、決まっていたずら者のカワウソが現れるのだった。
カワウソたちは、舟の周りを泳ぎながら、「爺さん、カニくれ、カニくれや。」と囃し立て、周りの魚を全部追い払ってしまう。
こんな訳で、仙造爺さんはいつも魚がろくに取れなかった。それでも気の優しい仙造爺さんは、カワウソたちが何となく可愛く思え、決して怒らないのだった。
そんなある日、爺さまがいつものように釣り糸を垂れていると、一匹のカワウソが舟の近くにやって来る。ところが何かいつもと様子が違う。
カワウソにはいつものような元気がなく、舟の周りを弱々しく泳いでいるのだ。そこで爺さまは、そのカワウソを舟の上に抱き上げてみた。すると、カワウソの口には大きな釣り針が刺さっていた。
爺さまは、口に刺さった釣り針を抜いて、傷口を丁寧に洗ってから、そのカワウソを川に返してあげた。カワウソは、爺さまに何度も何度もお礼を言いながら去っていった。
次の日は強い雨だったが、それでも爺さまは笠をかぶって釣りに行くことにした。ところがどうしたわけか、今日に限って魚が次々にかかる。
釣竿では間に合わないので、爺さまは網をうつことにした。すると、これまた網の中は魚でいっぱいになり、舟は足の踏み場も無いほどの大漁だ。
その時、川の中から「爺さん、爺さん。」と呼びかける声がする。爺さまが川面を見ると、そこには昨日爺さまに助けられたカワウソが、
仲間と一緒にいた。カワウソたちは、助けてもらったお礼にと、川の上流と下流とに分れ、魚を爺さまの網の中に追い込んでいたのだ。
それからというもの、爺さまが釣りをする時は、いつもカワウソたちが手伝うので、爺さまは国一番の魚釣りの名人になったそうだ。
しかし、江戸に木材、米などを運ぶ船が次第に多くなり、あれほどいた魚、カニやエビなども少なくなり、カワウソや仙造爺さんの姿もいつの間にか見えなくなったということだ。
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