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からすの長さん

昔、肌の色が黒いため皆から「からすの長さん」と呼ばれている男がいた。長さん自身はこのあだ名を気にしていたが、それを知られたくない一心でわざと鴉の鳴き真似をするので余計周りから誤解されるようになった。
ある夜、清涼寺(せいりょうじ)の本堂の新築祝いの宴で村人達が長さんに「からす踊り」を踊るよう囃し立てる。
嫌と言えない長さんは急かす皆の声に負けからす踊りを踊ってしまい、あまりの面白さに清涼寺に住む狢(人を化かす狸の類)までもが浮かれていた。
それから幾日かして、夜になると何者かが「からすの長さん鳴いてみな、からす踊りやってみな」と言いながら長さんの家の戸を叩いてくる。
初めは長さんも村の誰かの悪戯だと思い我慢していたが、それが何日も続くので一計を案じた長さんは囲炉裏の灰を戸の前に撒き、その夜は声が聞こえてもぐっと堪えて眠りについた。
翌朝、灰の上の足跡で犯人が狢だと知った長さんは激怒し、狢の住処が清涼寺の築山(庭園に作られた人工の山)にある事を突き止めると村の皆に狢退治の応援を頼んだ。
熱り立った長さんと村人達は清涼寺にやって来ると、狢を燻り出そうと狢の巣の入り口に薪を積み上げ火を点けた。
やがて巣から狢が飛び出してきたがどうしたわけか煙が逆流し始め、その煙たさに狢と皆は堪らず本堂へ駆け込んだ。
そして皆が本堂の中で逃げ回る狢を追いかけているうち、どこからか「ばかもん!」と大きな怒鳴り声が聞こえてきた。
声の主は本堂の阿弥陀様であり、村人達は腰が抜け動けなくなった長さんを置いて逃げ出してしまった。
阿弥陀様は、元はといえば鴉の鳴き真似やからす踊りを断らなかった長さんに原因があり、これに懲りたら今後一切鴉の真似などしてはならないと長さんを戒めた。
それからというもの長さんは、阿弥陀様に言われた通り決して鴉の鳴き真似やからす踊りをしなくなったという。
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